UNEMPLOYED ECONOMICS

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『ポストケインズ派経済学入門』

『ポストケインズ派経済学入門』(マルク・ラヴォア著、ナカニシヤ出版)を読了しました。

 

 

ポストケインズ派経済学(Post-Keynesian economics)というのは、新古典派経済学(Neoclassical economics)や新ケインズ派経済学(ニューケインジアン、New Keynesian economics)といった「主流派経済学」に対し、「異端派経済学」と呼ばれている経済学派の一つです。

異端派経済学には、他にもマルクス経済学(Marxian economics)や制度学派経済学(Institutional economics)など様々な学派がありますが、その中でもジョン・メイナード・ケインズJohn Maynard Keynes, 1883-1946)の研究業績を基盤として発展しているのがポストケインズ派経済学です。

ケインズ派経済学(ニューケインジアン)もケインズの研究業績を基盤として発展している経済学ですが、新ケインズ派とポストケインズ派では名前は似ていても、その学問的主張は大きく異なるので注意が必要です。

ポストケインズ派経済学に大きな影響を与えている経済学者としては、ケインズの他、ロイ・ハロッド(Roy Forbes Harrod, 1900-1978)、ジョーン・ロビンソン(Joan Violet Robinson, 1903-1983)、ニコラス・カルドア(Nicholas Kaldor, 1908-1986)、ミハウ・カレツキ(Michał Kalecki, 1899-1970)、ピエロ・スラッファ(Piero Sraffa, 1898-1983)などが挙げられます。

ポストケインズ派経済学には、ファンダメンタリストケインズ原理主義)、スラッファ派(新リカード派)、カレツキ派という三つの異なる潮流がありますが、本書はカレツキ派を重視して書かれているようです。

カレツキはケインズに先んじて「有効需要の原理」を発見していたとされ、知名度ではケインズにはるかに劣りますが、経済学上の重要人物の一人ですね。

 

では、この本でどのようなことが解説されているかわかるように、目次を紹介しておきたいと思います。

 

Ⅰ ポストケインズ派という異端

Ⅱ 異端派ミクロ経済学

Ⅲ マクロ経済的貨幣サーキット

Ⅳ 短期:有効需要労働市場

Ⅴ 長期:古い成長モデルと新しい成長モデル

 

私が最も興味を惹かれたのは、第Ⅲ章「マクロ経済的貨幣サーキット」ですね。

ここで論じられているのは、いわゆる「内生的貨幣供給理論」です。

新古典派経済学が貨幣供給を外生的だと考えているのに対して、ポストケインズ派は貨幣供給を内生的だと考えています。

貨幣供給が外生的なのであれば、中央銀行は金融調節することによって通貨供給量マネーストック)をコントロールすることができますが、貨幣供給が内生的なのであれば、中央銀行通貨供給量をコントロールすることができません。

現在の日本で行われている「アベノミクス」のベースとなっている「リフレ理論」では、貨幣供給を外生的と考えています。

リフレ派が激しく攻撃していた「日銀理論」は、貨幣供給を内生的と考えていました。

「異次元の金融緩和」政策が実施されたことにより、どちらが正しかったのかはもはや明らかでしょう。

貨幣供給は内生的であるため、中央銀行通貨供給量をコントロールすることができず、量的金融緩和政策にはあまり効果が無いということなのだと思います。

 

もし、貨幣供給が内生的であるのであれば、市中銀行は預金を貸し出しているのではなく、貸出が預金を創造しています。

ということは、企業が投資を行うために国民が貯蓄を行う必要はありません。

「貯蓄→投資」ではなく「投資→貯蓄」であるため、企業の投資が国民の貯蓄を増やすということになります。

企業が投資を行うために国民が貯蓄を行う必要がないのであれば、貯蓄にインセンティブを与える税制も必要ありません。

消費課税の場合は消費しなければ課税されないので、貯蓄に対するインセンティブを高めることになりますが、むしろ消費を減らしてしまうので経済にとってはマイナスであるということになります。

これまでの日本で採用されてきた「所得税を減税して、消費税を増税する」という方針は、根本的に間違っているのかもしれませんね。

 

本書は「入門」と銘打っているものの内容的には高度で、経済学の基本的な知識が無いと読みこなすのは難しいのではないかと思います。

私も完全に理解できているわけではありませんが、新古典派経済学は単純でわかりやすいが非現実的、ポストケインズ派経済学は現実的だが複雑でわかりにくいという印象を持ちました。

新古典派経済学も、非現実的ではあってもシンプルなモデルから議論をスタートしているというだけであって、すべて間違っているということはないでしょう。

とりあえず内生的貨幣供給理論を全面的に取り入れることで、経済学はより正しい方向へ進化すると思うんですけどねぇ・・・。