UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

放送大学『財政と現代の経済社会('19)』第14~15回

録画しておいた放送大学『財政と現代の経済社会('19)』の第14~15回を視聴しました。

 

第14回では「予算論」について、第15回ではこれまでの講義を踏まえて、21世紀のあるべき財政システムの未来像について学びました。

この講義を通じて学んだことは、政府の財政というのは、結局のところ「社会的価値」の選択の問題であるということ。

「限られた財政資源を、いったい何に投資すべきか?」という問題は、「私たちは、どのような国を目指すか?」という問題なのだろうということです。

 

私たち日本人が「持続可能な発展」を目指すためには、日本国を「公共投資国家」から「社会的投資国家」へと転換しなければなりません。

宇沢弘文(うざわ・ひろふみ、1928~2014年)は、自然環境・社会的インフラストラクチャー・制度資本を合わせて「社会的共通資本」と呼びました。

社会的共通資本は「公共財」としての性格を持つので、市場システムではうまく供給されません。

ですから、政府が財政支出することで、社会的共通資本に投資することが必要なわけですね。

政府の財政支出を「費用」ではなく、「投資」として捉えるということが、非常に重要な考え方なのではないかと思います。

 

この講義のテキストでは、資本主義経済の発展を支える資本として「社会資本」「自然資本」「社会関係資本」「人的資本」の4つが挙げられています。

社会資本は、電力・上下水道・鉄道網・道路網・港湾・電信電話網などのインフラストラクチャーを指します。

自然資本は、森林・漁業資源・良好な大気などの自然環境を指します。

社会関係資本は、ロバート・パットナム(Robert David Putnam, 1940-)らが提唱する資本概念で、社会の成員間での「信頼」や「互恵性」に基づいて形成されるネットワークを指します。

人的資本は、セオドア・シュルツ(Theodore William Schultz, 1902-1998)、ゲーリー・ベッカー(Gary Stanley Becker, 1930-2014)らにより開発された資本概念で、個人に体化された技能や知識を指します。

 

この中でも重要なのは、やはり「人的資本」なのではないでしょうか。

社会的投資国家においては、社会保障は「費用」ではなく、「人的資本への投資」として捉えられることになるわけですね。

残念ながら、日本は天然資源に恵まれていないので、資源は「人」しかないのではないかと思います。

教育や職業訓練を通じて、人的資本への投資を行うことによってしか、日本がこれからも経済成長していく道はないのでしょう。

2009年からの民主党政権では、「コンクリートから人へ」がスローガンとして掲げられていましたが、この方針はまったく間違っていなかったのだろうと思います。

日本経済が停滞しているのは、バブル崩壊後に新自由主義に基づいて雇用の非正規化が進められ、そのために人的資本がうまく蓄積されなかったからなのではないでしょうか。

正規雇用を拡大せざるを得ないのであれば、教育や職業訓練の機会を十分に確保するなどして、政府が人的資本に積極的に投資すべきだったのかもしれません。

 

この『財政と現代の経済社会('19)』は非常に面白かったのですが、「公債論」の部分がちょっと内容が薄いのではないかと感じました。

そもそもの問題として、日本の政府債務は維持可能なのか、基礎的財政収支プライマリーバランス)の黒字化を目指すべきなのか、よくわかりませんでした。

「日本は財政再建を目指すべきだ」という前提で議論が進んでいるようでしたが、MMT(Modern Monetary Theory、現代貨幣理論)のような考え方もあるわけで、積極的な投資によって経済成長できるのであれば、短期的な財政赤字は許容すべきなのかもしれません。

今のところ、中長期的には財政再建を目指すべきだと考えていますが、今後はこのあたりを重点的に学んでいきたいですね。

 

経済学や財政学に興味がある人にとって、この講義で基礎的な知識を得ることは非常に有用だと思います。

放送大学は無料で視聴できますので、放送大学生以外の人も興味のある分野について学んでみてはいかがでしょうか。