UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

NHK BS1『欲望の資本主義2020 ~日本・不確実性への挑戦~』

録画しておいたNHK BS1『欲望の資本主義2020 ~日本・不確実性への挑戦~』を視聴しました。

 

この『欲望の資本主義』シリーズは毎回面白いのですが、今回は日本経済をテーマにしていることもあり、特に面白く感じました。

基本的に、私が考えていること、このブログで主張していることは、フランスの経済学者であるジャック・アタリ(Jacques Attali, 1943-)が番組中で語っていることと同じです。

というわけで、番組中のジャック・アタリへのインタビューを少し引用してみたいと思います(字幕には句読点がないので、読みやすくするために句読点を追加しています)。

 

私たちの研究機関は、毎年世界各国の潜在力を格付けしています。

次世代への持続性を47の要素から測っています。

上位はスカンジナビア諸国です。

フランスは20位前後とよろしくありません。

残念ながら日本は、5年ほど前からほぼ最下位です。

日本が取り組むべきは、きわめて低い出生率・・・

人口減少、増え続ける巨額の公的債務、女性の社会的地位の低さなど、課題は山積しています。

 

貨幣の量についての、たしかな理論はこの世に存在しません。

債務がGDPの3倍なら大惨劇が起こる?

理論ではわからない。

しかし、ある限界はあります。

成長を促すためにお金を供給しても、いずれ見かけ倒しの経済成長が崩壊します。

明日起きると言っているのではない。

インフレが起きにくい現代だからこそ、制御不能なインフレが起き得るのです。

 

経済政策よりも重要なのは、社会的流動性です。

どんな環境で生まれ育った人でも、質の高い大学に行くチャンスがあることです。

世界中どこでも、経済政策ばかりに偏りすぎです。

 

スカンジナビア諸国」には定義がいくつかありますが、狭義ではスウェーデンノルウェーデンマークの3ヵ国、広義ではフィンランドアイスランドを加えた5ヵ国となり、要するに、日本で「北欧諸国」と呼ばれている国々のことですね。

やはり、うまくいっているのは北欧諸国なのであり、わが国が学ぶべきなのはアメリカではなく、北欧諸国なのではないでしょうか。

 

日本経済が長期停滞に陥っている最大の要因は、金融緩和の不足でもなければ、消費税の増税でもなく、少子高齢化の進展です。

いわゆる「リフレ派」の経済学者たちは、日本銀行が大規模な金融緩和を行えば、日本経済が再び力強く成長を始めるかのような幻想を振りまきました。

「リフレ派」の経済評論家の中には、上念司(じょうねん・つかさ)さんのように「日銀はコミンテルン *1 に支配されており、日本を衰退させるために金融緩和しないのだ!」といった陰謀論を展開する者までいました。

そして、アベノミクスで「異次元の金融緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和政策が行われましたが、それにより日本経済は輝きを取り戻したでしょうか?

どう考えても、儲かっているのは一部分の人たちだけであり、大部分の人たちは相対的に貧しくなっているように思えます。

 

考えてみれば、私が経済学を勉強しようと思ったのは、ネット上を中心に「リフレ理論」が持て囃されるようになった頃でした。

その当時は、「リフレ政策を採用しないから」と言って、民主党政権が盛んに攻撃されていたんですね。

私は、「インフレ目標を設定して大規模な金融緩和を行うことにより、インフレ期待を高める」という政策は、うまくいかないのではないかと考えました。

中央銀行マネーストックを直接コントロールできないし、国民は金融政策を確かめながら消費をするわけではないからです。

また、ネット上でリフレ政策を喧伝している人たちは、そもそもリフレ理論をあまり理解していないようにも思えました。

現在では、MMT(現代貨幣理論、Modern Monetary Theory)をめぐる議論が、同じような状況に陥っているように感じます。

 

私たちは、代表的なリフレ派経済学者であった岩田規久男(いわた・きくお)前日銀副総裁の姿を、目に焼き付けておく必要があるのではないかと思います。

岩田前副総裁は「2年でインフレ率2%が達成できなければ辞任する」と言っていましたが、任期満了まで5年間辞任することはありませんでした。

「どうやら、リフレ政策は思ったほどうまく行かなかったようだ」「どうやら、リフレ理論にはどこか欠陥があったようだ」「出口戦略には大きな困難が予想されるが、その責任の一端は自分にある」といった反省を口にすることは、おそらく死ぬまでないんでしょう。

 

結局のところ、夢のようなバラ色の解決策などは存在せず、そのような政策に飛びついて痛い目を見るのは私たち国民なのだろうと思います。

たとえ困難であっても、少子化対策などを地道に一歩ずつ進めていく以外に、日本経済復活の道はないのだろうといったことを考えさせられた番組でした。

*1:共産主義インターナショナル」の略称。1919~43年に存在した国際共産主義運動組織のこと。