UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

放送大学『現代経済学('19)』第12~13回

録画しておいた放送大学『現代経済学('19)』の第12~13回を視聴しました。

 

第12回で取り上げられたノーベル経済学賞受賞者は、バーノン・スミス(Vernon Lomax Smith, 1927-)、ウィリアム・ヴィックリー(William Spencer Vickrey, 1914-1996)、アルヴィン・ロス(Alvin Elliot Roth, 1951-)で、三人とも「マーケットデザイン」の分野で功績のあった経済学者です。

 

スミスはエドワード・チェンバレン(Edward Hastings Chamberlin, 1899-1967)の経済実験を発展させ、「実験経済学(experimental economics)」と呼ばれる分野を確立しました。

ヴィックリーはオークション理論の分野で、「ヴィックリー・オークション(Vickrey-auction)」とも呼ばれる「二位価格オークション(second-price auction)」が、入札者が評価額を正直に入札する優れた方式であることを証明しました。

ロスはマッチング理論の分野で、ノーベル経済学賞を共同受賞することになるロイド・シャープレー(Lloyd Stowell Shapley, 1923-2016)が考案した「受入保留方式」と呼ばれるマッチング方法を活用し、病院と研修医のマッチング、学校と生徒のマッチングなどの問題を解決しました。

 

第13回で取り上げられたノーベル経済学賞受賞者は、ハーバート・サイモン(Herbert Alexander Simon, 1916-2001)、ダニエル・カーネマン(Daniel Kahneman, 1934-)、リチャード・セイラー(Richard H. Thaler, 1945-)で、三人とも「行動経済学(behavioral economics)」の分野で功績のあった経済学者です。

 

サイモンは人間の合理性には限界(限定合理性)があり、「ヒューリスティクス(heuristics)」と呼ばれる経験則を用いて様々な選択を行っていることを明らかにしました。

カーネマンは、サイモンの理論を発展させて「行動経済学」と呼ばれる分野を確立した心理学者です。

合理的判断に基づいた最適解と経験則に基づいた現実解の間には「バイアス」による乖離があり、このことから「プロスペクト理論(Prospect theory)」と呼ばれる意思決定モデルを構築しました。

例えば、100%の確率で100万円もらえる選択肢Aと、80%の確率で200万円もらえるが20%の確率で1円ももらえない選択肢Bを選ばせると、多くの人は選択肢Aを選ぶ傾向があります。

数学の「期待値」の考え方を知っていれば、選択肢Aの期待値は100万円、選択肢Bの期待値は160万円であり、選択肢Bを選んだ方が得であることは明らかなのですが、人間は必ずしも合理的に判断するとは限らないのですね。

セイラーは「心理会計(メンタルアカウンティング)」や「ナッジ理論」など、行動経済学の発展に大きく貢献しました。

 

「経済学は現実には役に立たない」と言われることも多いですが、現在の経済学は、マーケットデザインや行動経済学といった「使える学問」として発展しているのですね。

この科目の主任講師である依田高典(いだ・たかのり)京都大学大学院経済学研究科教授も、専門は行動経済学であるようです。

 

伝統的な経済学では、経済的合理性に基づいて個人主義的に行動する「経済人(ホモ・エコノミクス、homo economicus)」が想定されているのですが、行動経済学はこれを真っ向から否定しているわけです。

当然のこととして、当初は経済学界からの風当たりが強く、ノーベル経済学賞受賞者のマートン・ミラー(Merton Howard Miller, 1923-2000)は「どの世代にも、間違った者が必ずいるものだ」と言ったんだとか。

 

考えてみれば、物理学者のアルバート・アインシュタイン(Albert Einstein, 1879-1955)だって、「神はサイコロを振らない」と言って量子力学を受け入れようとしなかったわけですよね。

新しい学問分野が受け入れられていく過程というのは、案外そのようなものなのかもしれません。

ですから、既存の学問を絶対視するのではなく、学問は常に発展して書き換えられていくものだということを念頭に置いておくことが、とても重要なのではないかと思います。