UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

放送大学『現代経済学('19)』第6~7回

録画しておいた放送大学『現代経済学('19)』の第6~7回を視聴しました。

 

第6回で取り上げられたノーベル経済学賞受賞者は、ジェームズ・トービン(James Tobin, 1918-2002)、ハリー・マーコウィッツ(Harry Max Markowitz, 1927-)、マイロン・ショールズ(Myron Samuel Scholes, 1941-)で、三人とも「金融経済学」の分野で功績のあった経済学者です。

 

トービンは「ポートフォリオ理論」や「q理論」で知られ、国際通貨取引に課税する「トービン税」を提唱したことでも有名です。

マーコウィッツは現代ポートフォリオ理論の基となる論文を発表し、それをウィリアム・シャープ(William Forsyth Sharpe, 1934-)が「CAPM(キャップエム)理論」に発展させて、二人はノーベル経済学賞を同時受賞しています。

ショールズは金融派生商品デリバティブ)について、フィッシャー・ブラック(Fischer Sheffey Black, 1938-1995)と共に「ブラック=ショールズ方程式」という偏微分方程式を考案し、「金融工学」と呼ばれる分野を発展させました。

ブラック=ショールズ方程式の数学的証明を行ったロバート・マートン(Robert Cox Merton, 1944-)と共にノーベル経済学賞を同時受賞しますが、二人が設立に参加していたヘッジファンドであるロングターム・キャピタル・マネジメント(Long-Term Capital  Management:LTCM)は、アジア通貨危機とロシア財政危機のあおりを受けて巨額の損失を出し、経営破綻してしまいます。

ノーベル経済学賞受賞者が自らの金融工学を駆使して資金運用し、巨額の損失を出して破綻したという事実は、ノーベル経済学賞の権威を失墜させる結果となってしまいました。

 

第7回で取り上げられたノーベル経済学賞受賞者は、ベルティル・オリーン(Bertil Gotthard Ohlin, 1899-1979)、ロバート・マンデル(Robert Alexander Mundell, 1932-)、ポール・クルーグマン(Paul Robin Krugman, 1953-)で、三人とも「国際経済学」の分野で功績のあった経済学者です。

 

オリーンは、「ヘクシャー=オリーンの定理」と呼ばれる定理を構築したことで知られています。

この定理によれば、資本豊富国は資本集約財を輸出して労働集約財を輸入、労働豊富国は労働集約財を輸出して資本集約財を輸入するということになります。

しかし、ワシリー・レオンチェフ(Wassily Leontief, 1905-1999)が、資本豊富国であるはずのアメリカが労働集約財を輸出していることを発見し、これは「レオンチェフパラドックス」と呼ばれています。

マンデルは、「マンデル=フレミングモデル」と呼ばれる理論モデルで有名です。

このモデルによれば、国際貿易が存在する開放経済を想定すると、固定相場制採用時には財政政策は効果を持ち、金融政策は効果を持ちません。

変動相場制採用時には、金融政策は効果を持ち、財政政策は効果を持たないということになります。

さらに、このモデルを拡張して「国際金融のトリレンマ」が導き出されます。

これは、「自由な資本移動」「為替相場の安定(固定相場制)」「独立した金融政策」の三つの政策は同時に実現することができず、二つしか実現することができないというものです。

例えば、日本やアメリカは変動相場制を採用して為替相場の安定を放棄し、ユーロ加盟諸国は単一通貨ユーロを採用して独立した金融政策を放棄し、中国は自由な資本移動を認めていないわけですね。

マンデルは「最適通貨圏」の理論を提唱したので、「最適通貨圏の父」「ユーロの父」と呼ばれることもあります。

クルーグマンは「空間経済学」と呼ばれる研究分野の発展に貢献した経済学者ですが、日本では「リフレ理論」の基となっている考え方で有名ですね。

クルーグマンは、日本経済の長期低迷を「流動性の罠」に陥っているためだとし、日本銀行による大規模な金融緩和によってインフレ期待を起こすことが必要だと考え、インフレターゲット政策の採用を提唱しました。

この考え方をベースにして現在行われているのが、いわゆる「アベノミクス」であるわけですが、「日銀の異次元金融緩和で日本経済大復活!」などということは起こりませんでした・・・。

 

マイロン・ショールズにしても、ポール・クルーグマンにしてもそうですが、「ノーベル経済学賞受賞者が言っているのだから、正しいに違いない!」と考えるのは非常に危険なことなのだろうと思います。

特に「リフレ理論」は一見正しいような感じがしますが、よくよく考えてみると、どうして大規模金融緩和でインフレ期待を起こすことができるのかがよくわかりません。

さらに、日本のネット上では、クルーグマンの考え方からも外れた「トンデモリフレ理論」が跋扈していました。

「○○で日本経済大躍進!」みたいな話は耳触りが良いですが、本当にそのようなことが起こるのか、その政策にリスクはないのか、冷静に考えてみる必要があるのだろうと思います。