UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

放送大学『財政と現代の経済社会('19)』第2回

録画しておいた放送大学『財政と現代の経済社会('19)』の第2回「国家の役割とは何か」を視聴しました。

 

市場経済を重視するか、政府の市場への介入を重視するかという対立は、アダム・スミス(Adam Smith, 1723-1790)から始まる「古典派経済学」とアドルフ・ワグナー(Adolf Heinrich Gotthilf Wagner, 1835-1917)などの「ドイツ財政学」へと遡れるのですね。

政府の市場への介入を重視する立場としては、ジョン・メイナード・ケインズJohn Maynard Keynes, 1883-1946)が「ケインズ経済学」を打ち立てたのですが、ミルトン・フリードマンMilton Friedman, 1912-2006)が「マネタリズム」で巻き返し、現在では合理的期待形成学派や新古典派マクロ経済学といった市場経済重視の方向が有力になっているわけですね。

 

リチャード・マスグレイブ(Richard Abel Musgrave, 1910-2007)は、財政の三機能として「資源配分機能」「所得再分配機能」「経済安定化機能」を挙げました。

資源配分機能は、公共財、外部性、独占・寡占、平均費用逓減、情報非対称性などに関する「市場の失敗」に対応するためのものです。

所得再分配機能は、累進課税社会保障制度により経済的格差を是正するためのものです。

経済安定化機能は、不況時には減税や財政支出の拡大、好況時には増税財政支出の縮小を行うことで、景気変動の影響を抑えるためのものです。

 

これに対して、この授業では「体制安定化機能」「経済成長促進機能」「生活保障機能」「規制機能」の四つを挙げていました。

私は、現在においても経済安定化機能は、重要な財政機能の一つなのではないかと思っています。

しかし、これはあくまでも景気変動の影響を抑えるためのものであり、経済成長を促進するためのものではありません。

持続的な経済成長を実現するためには、国家が人的資本への投資(=教育)を行うことが必要であり、これには学校教育だけでなく職業教育も含めるべきだということなのだろうと思います。

 

国家の目的は国民を幸福にすることであり、これは経済学的には「社会的厚生関数を最大化する」と表現することができます。

この授業では、「ベンサム型社会的厚生関数」「完全平等型社会的厚生関数」「稼得能力依存型社会的厚生関数」「ロールズ型社会的厚生関数」の四つについて解説されていました。

ベンサムというのは「功利主義」で知られるジェレミ・ベンサムJeremy Bentham, 1748-1832)のことで、ロールズというのは1971年の『正義論』で知られるジョン・ロールズ(John Bordley Rawls, 1921-2002)のことです。

経済的平等度が高い順から、完全平等型→ロールズ型→ベンサム型→稼得能力依存型となるのですが、では、どの社会的厚生関数に基づいて最大化すべきなのかということは、経済学では答えを出すことができません。

 

unemployed-economics.hatenablog.jp

 

結局のところ、私たちがどのような社会を目指すべきかということは、経済学ではなく哲学の一分野である「政治哲学」で考えなくてはならないわけですね。

「経済的自由を重視するのか、経済的平等を重視するのか」「個人の利益を重視するのか、全体の利益を重視するのか」といったことは、国民一人ひとりが判断するしかなく、そのような「社会的価値の選択」の結果として国家の役割も決まってくる。

この「社会的価値の選択」について意思表示する場が、「選挙」ということになるのだろうと思います。

 

今回の授業も、とても面白かったです。

せっかく無料で視聴できるのですから、経済学や財政学に興味がある人は一度見てみることをお勧めします。