UNEMPLOYED ECONOMICS

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『マンキュー経済学Ⅱ マクロ編(第3版)』第11章読了

『マンキュー経済学Ⅱ マクロ編(第3版)』(N・グレゴリー・マンキュー著、東洋経済新報社)の第11章「貨幣システム」を読み終わったので、内容を軽くまとめておきたいと思います。

 

 

私がマクロ経済学に違和感を感じるのは、おそらく貨幣システムについての説明がおかしいからなのではないかと思います。

この教科書にも「貨幣乗数(money multiplier)」の理論が載っていますが、これはどう考えても間違ってますよね(汗)

 

貨幣乗数論では、銀行の貨幣創造(信用創造)について次のように説明します。

 

まず、誰かが第一銀行に100ドル預金する。

第一銀行の「準備率(reserve ratio)」が10%だとすると、第一銀行は10ドルを預金引出しに備えて「準備(reserves)」として残し、90ドルの貸出を行う。

90ドル借りた人がそのお金を使い、受け取った人が第二銀行に90ドル預金する。

第二銀行の準備率も10%だとすると、第二銀行は9ドルを準備として残し、81ドルの貸出を行う。

81ドル借りた人がそのお金を使い、受け取った人が第三銀行に81ドル預金する。

もし、第三銀行の準備率も10%だとすると、第三銀行は・・・(以下省略)

預金総額は100ドル+90ドル+81ドル+・・・と増えていき、総額1000ドルの貨幣が創造される。

100ドルの準備が1000ドルの貨幣を生み出しているので、この場合の貨幣乗数は10である。

 

この説明がおかしいことは、誰の目にも明らかです。

なぜなら、誰かが第一銀行に100ドル預金したのであれば、第一銀行は900ドルの貸出を行えるはずだからですね。

このとき、第一銀行の貸借対照表は・・・

 

(借方) 準備 100ドル  (貸方) 預金 1000ドル

     貸出 900ドル

 

・・・となるので、きちんと準備率10%は維持されています。

つまり、100ドル預金されたら最大900ドルの貸出を行えるということなので、実際にどれだけ貸し出すか(=どれだけ貨幣が創造されるか)は銀行の判断次第ということになります。

しっかりとした担保を用意できて、きちんと利子をつけて返済してくれそうな借り手がいれば貸し出すし、そのような借り手がいなければ貸し出さないので、100ドルの準備が1000ドルの貨幣を生み出すとは限らないことがわかります。

 

さらに言えば、実際には最初の100ドルの預金すら必要ではありません。

銀行は先に900ドルの貸出を行い、後から100ドルの預金を確保すればよいからですね。

もし、預金が確保できなかったり、預金が引き出されたりして準備が足りなくなった時には、他の金融機関や中央銀行から借り入れて準備とすればよいわけです。

 

要するに、「銀行に預けられた預金が、貨幣乗数倍の貨幣を生み出す」という考え方そのものが間違いなのですね。

このことを知っていると、なぜ「アベノミクス」があまりうまくいっていないのか、「リフレ理論」のどこが間違っているのかを理解することができます。

もし、貨幣乗数論が正しいのであれば、日本銀行が金融緩和してマネタリーベースを増やすことで、マネーストックを増やすことができます。

しかし実際には、銀行の貸し出しによってマネーストックが決まり、それに応じて日銀がマネタリーベースの供給を行っているのですから、日銀はマネーストックをコントロールすることができません。

日銀はマネタリーベースの供給を縮小することで、マネーストックの伸びを抑制することはできるでしょうが、貸付資金需要がないのにマネタリーベースの供給を拡大しても、マネーストックの伸びを促進することはできません。

金融政策は引き締め方向にはよく効くが、緩和方向にはあまり効かない・・・これは凧揚げの時に、ひもを引っ張ることで凧が上昇し過ぎるのを抑えることは出来るが、ひもを押すことで凧を上昇させることは出来ないのによく似ているので、「凧ひも理論」と呼ばれています。

「リフレ派」の経済学者たちは、この考えを「日銀理論」であるとして激しく攻撃していました。

しかし、そもそも貨幣乗数論がおかしいのですから、どう考えても日銀理論のほうが正しかったわけです。

アベノミクスで日本経済復活!」だとか、「アベノミクスで日本経済大躍進!!」だとかいうのは、本当に馬鹿げた話なんですよね(苦笑)

 

「貨幣創造についての理論がおかしい」というのは昔から言われていたことのようなのですが、そのような指摘がマルクス経済学やポストケインズ派経済学といった非主流派経済学からのものであったためか、明らかに間違っているにもかかわらず、今なお修正されていないようです。

最近話題になっているMMT(現代貨幣理論、Modern Monetary Theory)は、貨幣創造についての正しい理解をもたらしてくれる理論なのだろうと思います。

貨幣創造についての理論を修正することで、マクロ経済学によって導き出される結論もまた変わってくるのではないでしょうか。

 

※注:2019年3月21日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。