UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

『マンキュー経済学Ⅱ マクロ編(第3版)』第8~9章読了

『マンキュー経済学Ⅱ マクロ編(第3版)』(N・グレゴリー・マンキュー著、東洋経済新報社)の第8~9章を読み終わったので、内容を軽くまとめておきたいと思います。

 

 

GDP(yield:Y)は、消費(consumption:C)・投資(investment:I)・政府支出(government purchases:G)・純輸出(net exports:NX)の四つの構成要素に分けられるので・・・


Y=C+I+G+NX

・・・という恒等式が成り立ちます。

ここで、他の国との交流がない閉鎖経済を仮定すると・・・

 

Y=C+I+G

 

・・・となり、この恒等式を変形すると・・・

 

Y-C-G=I

 

・・・となります。

この式の左辺は、総所得から消費と政府支出を引いた残りなので、「国民貯蓄(national saving:S)」と呼ばれます。

よって、左辺をSに置き換えると・・・

 

S=I

 

・・・となり、国民貯蓄と投資は等しいということになります。

総所得から消費と政府支出を引いた残りが国民貯蓄なのですから・・・

 

S=Y-C-G

 

・・・となり、ここで租税(tax:T)を導入すると・・・

 

S=(Y-T-C)+(T-G)

 

・・・となり、国民貯蓄は「民間貯蓄(private saving)」と「政府貯蓄(public saving)」の合計となります。

 

この教科書では、これらの式から「投資を増やすためには、民間貯蓄や政府貯蓄を増やさなければならない」という方向に話を持って行っているのですが、この議論がおかしいと思うのは私だけですかねぇ・・・。

もし、民間貯蓄や政府貯蓄を増やさなければならないのであれば、「民間貯蓄を増やすために、所得税を減税して消費税を増税する」「政府貯蓄を増やすために、政府支出を削減して財政黒字にする」といった結論が導き出されるでしょう。

しかし、これって正しいんでしょうか???

S=Iというのは恒等式なので、ただ単に「国民貯蓄と投資は等しい」と言っているだけに過ぎません。

ですから、ここから「投資を増やすためには、民間貯蓄や政府貯蓄を増やさなければならない」といったことは言えないのではないかと思います。

 

そもそもの問題として、企業経営者が設備投資を行うのは、誰かが貯蓄を増やしたからですか?

・・・違いますよね、将来的に利益を上げるためですよね。

国民が消費を減らしたり、政府が支出を減らしたりしている状況で、設備投資したら儲かるんですか?

・・・違いますよね、商品が売れなきゃ儲かりませんよね。

それなら企業の設備投資を促すためには、国民が消費を増やしたり、政府が支出を増やしたりしたほうがいいんじゃないですか!?

 

S=Iというのは、あくまでも結果としてそうなっているだけ・・・というか、総所得のうちの消費と政府支出以外の部分を「国民貯蓄」と呼び、総生産のうちの消費と政府支出以外の部分を「投資」と呼んでいるのですから、「総所得=総生産」なのであれば「国民貯蓄=投資」なのは当たり前のことです(汗)

つまり、「経済学上の投資」は必ずしも企業の設備投資のことではない *1 のに、「経済成長するためには、投資が必要であり・・・」という話と強引にリンクさせるから、おかしな議論になってしまうのだと思います。

 

さらに、そもそもの問題として、これは「市中銀行(民間銀行)に信用創造機能がなく、貨幣供給量が固定されている場合」なのではないでしょうか?

もし、市中銀行信用創造機能がないのであれば、投資するためには誰かが貯蓄しなければならないでしょう。

しかし、市中銀行には信用創造機能があるので、貸し出しを行うことでお金を作り出せばよいというだけのことです。

貸し出しを行った分の支払準備金が必要なのであれば、中央銀行から借り入れを行えばよいというだけのことです。

結局のところ、「貸付資金需要が増加したら、市中銀行信用創造すればよい」というだけのことなので、投資を増やすために国民貯蓄を増やす必要はないのではないでしょうか?

 

ということは、この教科書に載っている「貸付資金市場において、需要と供給のバランスによって利子率が決まり、利子率によって需要と供給が均衡するように調整される」という話は、ちょっとおかしいということになります。

中央銀行は資金供給を調節することによって利子率を操作しているのですから、国民が消費を減らして貯蓄を増やしたり、政府が支出を減らして財政黒字にしたりする必要は全くないのではないかと思います。

 

国民貯蓄と投資は結果として一致しているだけであり、投資が増えた時には国民貯蓄も増えているし、国民貯蓄が増えた時には投資も増えている。
なぜ、そうなるのかは明らかですよね・・・ただ単に、そのように定義しているからです(笑)
そこから、「投資を増やすためには・・・」といった方向に話を持っていくと、議論が非常におかしなものになってしまうように思います。

 

※2019年3月16日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。

*1:例えば、商品が売れ残ると「在庫投資」として、住むために家を建てると「住宅投資」として、どちらも投資が増えることになります。