UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

NHK BS1『欲望の資本主義2017 ~ルールが変わる時~』

録画しておいたNHK BS1『欲望の資本主義2017 ~ルールが変わる時~』を視聴しました。

 

私は常々、「経済学」はかなり誤解されていると感じています。

というよりも、経済学を悪用して他人をだまそうとする人たち(そして、あっさりだまされる人たち)が非常に多いので、おかしなことになってしまっているように思います。

 

「経済学の父」と呼ばれるアダム・スミス(Adam Smith, 1723-1790)は、『諸国民の富の性質と原因に関する研究(国富論)』だけでなく、『道徳感情論』という本も書いています。

道徳感情論』では「共感(sympathy)」について論じられていて、アダム・スミスは人間の利己的な部分と利他的な部分の両方を考えていたことがわかります。

タワーマンションの最上階では連日パーティーが開かれているけど、建物の周囲には餓死者の死体が転がっているというような社会になってしまっては、おそらくその社会は遠からず滅んでしまうでしょう。

アダム・スミスは「(神の)見えざる手」という表現で市場メカニズムが効率的であると主張したかもしれませんが、だからといって、市場原理による弱肉強食の社会が良いと考えていたわけではありません。

 

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ケインズ経済学」で知られるジョン・メイナード・ケインズJohn Maynard Keynes, 1883-1946)についても同様なのですが、こちらは番組中のトマス・セドラチェク(Tomas Sedlacek)チェコ総合銀行チーフエコノミストとルチル・シャルマ(Ruchir Sharma)モルガンスタンレー投資ストラテジストの対談を少し引用してみたいと思います(字幕には句読点がないので、読みやすくするために句読点を追加しています)。

 

シャルマ「ケインズ主義は、金融危機の後喧伝(けんでん)されたよね。でも、私が見る限り、状況はやや「ねじれて」いるね。ケインズが過去に言ったことが、誇張されているように感じるよ。たとえば、もう危機から7~8年経って経済は回復しているのに、財政赤字を続けていいとはケインズは言わなかったはずだ。」

セドラチェク「ニセのケインズ主義だね。ケインズの半分だけを見て、もう半分を忘れている。」

シャルマ「たしかに、予算を黒字にするのはいつだって難しいものだが、ケインズを引き合いに出して赤字を正当化している。(中略)君の言うように、人々はケインズを都合よく解釈しているよね。どの国も成長するために、ケインズの理論を「悪用」している。いくつかの国は、ケインズを悪用して経済を崖から突き落とそうとしている。ケインズの名前を出せば、負債増はOKだと都合よく解釈してね。」

 

ケインズは、不況時には政府が財政出動して需要を創出するべきだと主張したかもしれませんが、だからといって、財政規律を無視してよいと考えていたわけではありません。

景気後退期には積極的に財政出動して、景気拡張期には積極的に財政再建を進めるということをしないと、増えすぎた政府債務は、結局は「インフレ税」という形で国民の負担となってしまい、経済にダメージを与えてしまいます。

 

結局のところ、経済学が問題なのではなくて、「経済学を利用して、平気でウソをつく人」が問題なんですよね。

ところが、そういう人に限って「愛国者」を名乗っていて、自分にとって都合の悪い人たちを「売国奴」と罵っています。

『偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴と罵られた世の中を、私は経験してきた』という三笠宮崇仁親王(みかさのみや・たかひとしんのう、1915~2016年)の言葉を思い起こさないと。

 

世界的に生産年齢人口の伸びが低下(日本の場合は減少)していることを考えると、今後はあまり経済の高成長は期待できません。

経済成長を目指すのは当然のことなのですが、もっと重要なのは、低成長でも持続可能なように社会システムを作り替えることだと思います。

市場原理主義に陥るのでもなく、財政規律を無視するのでもなく、本来のケインズの考え方に立ち戻って「修正資本主義」でいけば、今後も資本主義は維持・発展できるのではないかと思うんですけどねぇ・・・。

 

※注:2019年1月16日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。