UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

日本の合計特殊出生率と人口置換水準(1947~2016年)

先日、「日本のコアCPI上昇率と合計特殊出生率(1971~2015年)」という過去記事をはてなブログに移転したのですが、人口置換水準の推移をグラフにしていないので、いまいち文章がわかりにくいように感じました。

 

unemployed-economics.hatenablog.jp

 

・・・というわけで、国立社会保障・人口問題研究所ホームページで日本の合計特殊出生率と人口置換水準を調べてみました。

 

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出典:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集 2018年版

 

国立社会保障・人口問題研究所ホームページには、2016年までの人口置換水準が載っていましたので、今回は1947~2016年の合計特殊出生率と人口置換水準をグラフにしてみました。

合計特殊出生率」というのは、一人の女性が15~49歳に生む子どもの数の平均です。

具体的には、その年における各年齢(15~49歳)の女性の出生率を合計したものとなります(これを「期間合計特殊出生率」といいます)。

実際には、「一人の女性が15~49歳に産む子供の数の平均」は、その世代の女性が50歳を迎えるまで計算することができません。

ですから、一般的には期間合計特殊出生率合計特殊出生率として用いられ、これが「一人の女性が一生の間に産む子供の数」と表現されているわけです。

「人口置換水準」というのは、人口が長期的に増加も減少もしなくなるような合計特殊出生率の水準のことです。

子どもを産むのは女性ですから、生まれた子どもの何%が女の子であるか、生まれた女の子の何%が50歳まで生存できるかによって、人口を維持するために必要な子どもの数も変わってくるということになります。

 

戦後すぐの1947年を見てみると、当時は乳幼児の死亡率が高かったので、人口置換水準も2.71と高くなっています。

しかし、人口置換水準をはるかに超える合計特殊出生率4.54を記録しているので、この状況が続けば、人口は将来的に増えていくことになります。

その後、医療の発達や公衆衛生の改善など、国民生活が豊かになるにつれて人口置換水準は低下していきますが、それを上回るスピードで合計特殊出生率も低下していきます。

早くも1956年には、人口置換水準2.24に対して合計特殊出生率2.22となっており、この状況が続けば、人口は将来的に減っていくことになります。

その後、合計特殊出生率が人口置換水準以上の数値となったのは1965年と1968~73年だけで、1974年以降はずっと下回り続けています。

 

このグラフからわかることは、日本の少子化の問題は1956年にはすでに始まっていて、その後一時改善したものの、1974年以降の状況はかなり深刻であるということです。

このグラフを見れば、日本の少子化は経済の低迷が原因であるとか、不況が原因であるとか、デフレが原因であるなどという主張が、いかに馬鹿げたものであるかがよく理解できるのではないかと思います。

もちろん人口学者は、合計特殊出生率が人口置換水準を下回り続ければ、将来的には人口が減少してしまうと警告を発し続けていたでしょうが、往々にして人々は学者の言うことには耳を傾けません(苦笑)

2010年になって、ようやく民主党政権により子ども手当や高校授業料無償化といった大規模な少子化対策が実施されましたが、自由民主党の反対によって子ども手当は廃止に追い込まれてしまいました。

 

ケインズ経済学」で知られるジョン・メイナード・ケインズJohn Maynard Keynes, 1883-1946) が1937年に行った講演「Some economic consequences of a declining population(人口減少の経済的帰結)」を読んでみると、次のような文章が出てきます。

 

Demand tends to be below what was expected, and a state of over-supply is less easily corrected. Thus a pessimistic atomosphere may ensue; and, although at long last pessimism may tend to correct itself through its effect on supply, the first result to prosperity of a change-over from an increasing to a declining population may be very disastrous.

(訳:(人口減少の時期には・・・)需要は予想より低くなる傾向があり、供給過剰の状態は修正されづらくなります。その結果として、悲観的な雰囲気が起こるでしょう。そして、悲観的な見方が供給に影響を及ぼすことで、ようやく悲観的な見方そのものが修正されるかもしれませんが、人口増加から人口減少へと転換することによる繁栄への最初の結果は、非常に悲惨なものになるでしょう。)

 

ケインズが言っていることは、現在の日本にそのまま当てはまるのではないですか?

続けて読んでいくと、ケインズは「policies of increasing consumption by a more equal distribution of incomes and of forcing down the rate of interest(より平等な所得分配により消費を増加させる政策と金利を引き下げる政策)」が必要だと主張しています。

日本では1999年からゼロ金利政策が行われており、あとは「より平等な所得分配により消費を増加させる政策」を採る以外に手はありません。

ところが、消費税を増税して所得税法人税を減税したり、社会保障関係費の伸びを抑制したりといった、政府の所得再分配機能を弱めるような政策が行われているため、ケインズが予想した通りにとても悲惨なことになってしまっているわけですね。

 

「Some economic consequences of a declining population(人口減少の経済的帰結)」については、『道草』というブログの「「人口減少の経済的帰結」 BY JOHN MAYNARD KEYNES」という記事に全文訳が載っていますので、興味がある方は読んでみることをお勧めします。

 

econdays.net

 

※注:2018年12月31日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。