UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

京都大学大学院・藤井聡教授「日本の成長率は-20%」

なんだか、5ちゃんねる(旧・2ちゃんねる)でこのグラフが話題になっているみたいですね。

 

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このグラフによると、日本の「成長率」は-20%で、世界で唯一の衰退している国家なんだそうです(笑)

 

結論から先に言うと、このグラフは「ウソではないけどデタラメ」です。

いったい何がデタラメなのかというと、まず、これは「名目経済成長率(名目GDP成長率)」のランキングです。

名目経済成長率は、物価が上昇している国ではそれだけ高く、物価が下落している国ではそれだけ低くなります。

日本は長くデフレが続いていたので、名目経済成長率は低くなってしまうのですね。

逆に言えば、経済が崩壊していてハイパーインフレーションに見舞われている国では、名目経済成長率はものすごく高くなってしまうことになります。

ですから、各国の名目経済成長率を比較しても、あまり意味がありません。

 

次に、これは「アメリカドルに換算して計算した場合」のランキングです。

アメリカドルに換算して計算した名目経済成長率は、通貨の価値がドルに対して上昇している国ではそれだけ高く、通貨の価値がドルに対して下落している国ではそれだけ低くなります。

日本はアベノミクスで大規模な金融緩和を行ったので、急激に円安が進行しました。

そのため、アメリカドルに換算した名目GDPは、2012年の約6.2兆ドルから2015年の約4.4兆ドルへと急激に減少しています。

これでは、2012~2015年の名目経済成長率は、-29%くらいだったことになってしまいますね(笑)

ですから、各国のアメリカドルに換算して計算した名目経済成長率を比較しても、あまり意味がありません。

ちなみに、日本円で計算した1995~2015年の名目経済成長率は、約3.8%のプラス成長となります。

 

「じゃあ、各国の成長率は何で比べればいいの?」ということになりますが、単純に「実質経済成長率(実質GDP成長率)」を比較すればよいのではないでしょうか。

 

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出典:国際通貨基金世界経済見通し(World Economic Outlook)

 

国際通貨基金International Monetary FundIMF)」は、国際通貨システムの安定を目的としている国際連合の専門機関です。

今回は、IMFの「世界経済見通し(World Economic Outlook)」のデータを基にして、先進国の1995~2015年の実質経済成長率をグラフにしてみました。

「先進国」は、経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development:OECD)加盟36ヵ国としました。

先進国にデータを絞ったのは、経済が成熟している先進国と発展の余地が大きい発展途上国の経済成長率を比較しても、あまり意味がないからです。

 

結果は見ての通り、日本は低いながらも経済成長しており、世界で唯一の衰退している国家などではないことがわかります。

というか、実質経済成長率で見ても日本経済が苦しい状況にあることは明らかなので、なぜ名目経済成長率で、しかもアメリカドルに換算して計算した名目経済成長率で他国と比較しなければならないのか理解に苦しみます。

 

「こんなデタラメなグラフを、いったい誰が作ったのか?」というと、藤井聡(ふじい・さとし)京都大学大学院工学研究科教授です。

自由民主党の安藤裕(あんどう・ひろし)衆議院議員を呼びかけ人代表として立ち上げられた「日本の未来を考える勉強会」というのがあって、2017年9月28日の勉強会では藤井教授が講師として招かれています。

そこで示されている資料の一つが、このグラフなんですね。

 


「日本の未来を考える勉強会」第2ステージ・第1回ー成功しつつあるアベノミクス。しかし完全成功には、財政政策が絶対必要である。ー 平成29年9月28日 講師:内閣官房参与・京都大学大学院教授 藤井 聡氏

 

この動画の6:23あたりからグラフが出てきますので、確認してみてください。

 

藤井教授は経済学が専門でないとはいえ、これはさすがにいくら何でもレベルが低すぎます。

こんな人物が京大大学院の教授だという時点で驚きですが、さらに、第2次安倍内閣では内閣官房参与(防災・減災ニューディール政策担当)を務めているんですね。

要するに、自民党の「国土強靭化」政策の仕掛人みたいな人であるわけです。

 

こんな事実に基づかないデタラメな議論がまかり通ってしまうのであれば、そりゃ、日本も衰退するでしょ(呆)

このようなグラフにすぐに騙される人が多いことは確かだと思いますが、藤井教授はちょっと日本国民の民度をなめ過ぎなんじゃないでしょうかねぇ・・・。

 

※注:2018年10月16日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。

この後、12月28日に藤井教授は内閣官房参与を辞職しています。