UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

経済評論家・三橋貴明「デフレで実質GDPがプラスに計算されてしまう」

「国の借金なんてウソだ!」と主張している人が、「デフレで実質GDPがかさ上げされる!」と言っているのを目にすることがあります。

 

「誰がそんなウソを広めているのだろう?」と思って調べてみたら、やっぱりこの人でした(笑)

 

ameblo.jp

 

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名目GDPがマイナス成長であったとしても、GDPデフレーターがそれ以上にマイナスなのであれば、実質GDPはプラス成長になります。

経済評論家の三橋貴明(みつはし・たかあき)さんは、これを「デフレ型経済成長」と名付けて、『実質GDPがプラスに「計算されてしまう」』と表現しています。

「計算されてしまう」とわざわざ鉤括弧付きにしていることから、三橋さんは「本当は経済成長していないが、数字上はプラスになっている」と考えているのだろうということが推測されます。

 

実質GDPは、「名目GDPGDPデフレーター×100」という計算式で求めることができます *1

計算しやすくするために、昨年の名目GDPが100兆円、GDPデフレーターが100、よって実質GDPが100兆円であったとして考えてみましょう。

今年の名目GDPが100兆円で変わらず、GDPデフレーターが50に低下し、よって実質GDPが200兆円だったとします。

三橋さん流に考えるならば、「本当はゼロ成長だが、物価が下落したことにより実質GDPがプラスに計算されてしまっている」ということになります。

しかし、よく考えてみると、物価が半分になってしまったにもかかわらず名目GDPが変わっていないということは、その国は2倍の財・サービスを生産しているはずです。

昨年より今年のほうが2倍の財・サービスを生産しているのであれば、誰がどう考えてもその国は経済成長しています。

もうわかったと思いますが、もし経済成長していないのであれば名目GDPは50兆円になっているはずであり、名目GDPが100兆円なのであれば国民は2倍の財・サービスを手に入れているので、むちゃくちゃ生活水準が上がっているはずです。

だからこそ、実質GDPは100→200兆円と倍増しているのであり、これは「プラスに計算されてしまっている」ということではありません。


要するに、名目GDPから物価変動の影響を取り除いたものが実質GDPなのですから、その国が経済成長しているかどうかは実質GDPの成長率(=実質経済成長率)を見なければなりません。

確かに、名目GDPがマイナスで実質GDPがプラスだと経済成長率がかさ上げされているように感じるかもしれませんが、そうではなくて、本当はプラス成長なのに名目GDPでは「見かけ上」マイナス成長となっているということなのです。

 

GDPデフレーターは参照年を100として計算されている」ということを知っておくと、このような勘違いを防げるかもしれません。

例えば、内閣府が発表している国民経済計算(GDP統計)は参照年が2011年なので、2018年の実質GDPというのは「2018年の名目GDPを2011年当時の物価水準で表してみた」という数字です。

2011年当時の物価水準で表しているのですから、今年がインフレであるかデフレであるかは全く関係ないことがわかります。

 

以前に「経済について語ることと経済学を学ぶこと」という記事でも書きましたが、名目値と実質値の違いというのはあまりにも基本的なことであるため、このような勘違いというのは、はっきり言ってあり得ないような低レベルの間違いです。

 

unemployed-economics.hatenablog.jp

 

公表しているプロフィールが正しいとすれば、三橋さんは東京都立大学経済学部を卒業しています。

2007年から多数の経済書を出版している経済評論家であり、私たちのような「アマチュア」ではなくて「プロフェッショナル」であるわけですよね。

そのような「プロの経済評論家」がいまだに名目値と実質値の違いについて理解していないというのは、いったいどういうことなんでしょう???

三橋貴明さんのブログを読むたびに、私は「経済学を学ぶ必要性」について再認識せざるを得ません。

 

経済学を学ぶ目的は、経済問題に対する出来合いの対処法を得るためではなく、そのようなものを受け売りして経済を語る者にだまされないようにするためである。

(ジョーン・ロビンソン(Joan Violet Robinson, 1903-1983))

 

※注:2018年9月1日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。

*1:実際の国民経済計算(GDP統計)では、名目GDPを実質GDPで割ることによって、事後的にGDPデフレーターを算出しています。