UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

日本は過去20年にわたって緊縮財政・・・って、本気で言ってるの!?

「国の借金なんてウソだ!」と主張している人の多くが、「日本は過去20年にわたって緊縮財政を続けてきた!」って言っています。

 

それによると・・・1997年4月に橋本内閣によって消費税が3%から5%に引き上げられ、11月には「財政構造改革の推進に関する特別措置法(財政構造改革法)」が制定され、日本は緊縮財政へと大きく舵を切った。

そのために、翌1998年から日本経済はデフレに陥ってしまい、緊縮財政を続けているためにデフレから脱却できず、ずっと経済が停滞したままである。

「国の借金」なんてウソなんだから、拡張財政でデフレを克服すべきだ!・・・ってわけですね。

 

まずは、「緊縮財政とは何か?」ということになりますが、本来は政府が支出を減らすことを言います。

しかし、政府が支出を減らさなくても、増税することで収入を増やすのであれば、それはやっぱり緊縮財政ですよね。

ということは、支出だけでなく、収支もいっしょに見た方がよいということになります。

 

・・・というわけで、1996~2017年度の国の一般会計について、基礎的財政収支対象経費と基礎的財政収支プライマリーバランス)をグラフにしてみました。

 

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出典:財務省財政統計(予算決算等データ)」「平成29年度決算

 

安倍内閣が「プライマリーバランス黒字化目標」としているのは、国民経済計算(GDP統計)を基に計算された「国と地方のプライマリーバランス」のようですが、私が問題にしているのは「国の借金」についてなので、今回は国の一般会計についてグラフにしてみました。

基礎的財政収支対象経費は、歳出から国債費と決算不足補てん繰戻を除いたものです。

歳出全体で見てもよいですが、拡張財政を主張している人たちは、たぶん歳出を増やして借金を返せと言っているのではありません。

歳出が増えていても、国債費が増えているだけなのであればそれは拡張財政ではないでしょうから、今回は基礎的財政収支対象経費をグラフにしました。

基礎的財政収支は、「(歳入-公債金収入-前年度までに発生した剰余金の使用残額-繰越歳出予算財源-決算調整資金受入)-(歳出-国債費-決算不足補てん繰戻)」という計算方法で求めています。

私はこの計算方法はあまり正しくないように思うのですが、このように計算すると内閣府中長期の経済財政に関する試算」の計数表と一致するので、おそらく内閣府ではこんな感じで計算しているのでしょう。

このあたりのことは書き始めると長くなってしまうので、また次回にでもまとめたいと思います(※注)。

基礎的財政収支のグラフは、見やすくするために軸を反転させてあります。

 

※注:基礎的財政収支の計算方法については、以下の記事にまとめました。

unemployed-economics.hatenablog.jp

 

基礎的財政収支対象経費を見てみると、1997年度以降は緊縮財政どころか2001年度まで支出が増えていて拡張財政、2007年度まではおおむね支出が減っていて緊縮財政ですが、2009年度に支出が激増して拡張財政、そしてそれ以降一度も75兆円を下回っておらず、1996年度と比べるとかなりの拡張財政が行われていることがわかります。

基礎的財政収支を見てみると、1998年度・2009年度・2011年度に赤字が急増していて拡張財政です。

2002年度をピークとして2007年度まで赤字が減少しているので緊縮財政、2011年度をピークとして2015年度まで赤字が減少しているので緊縮財政と言えるかもしれませんが、これまた1996年度と比べてみればかなりの拡張財政が行われてきたことがわかります。

そもそも基礎的財政収支の赤字が減少するのは、支出を減らしたから、増税したからというよりは、景気が良くなって税収が増えたからです。

基礎的財政収支の赤字が減少してはいけないのであれば、政府は景気が良くなると財政出動や減税をしなければならないというおかしな話になってしまいます。

 

全体として見ると、「1997年以降20年間にわたって緊縮財政が行われた」などという事実はどこにも無く、むしろ拡張財政が行われてきたことがわかります。

日本は1997年以降緊縮財政だというのは、経済評論家の三橋貴明(みつはし・たかあき)さんが言っていることなので、それをそのまま信じている人が多いのかもしれません。

 

ameblo.jp

 

新聞を読まず、ニュースも見ないという人は知らないのかもしれませんが、普通の人は「アジア通貨危機」による不況への対策として1998年に、「世界金融危機」による不況への対策として2009年に大規模な財政出動が行われたことや、過去20年間にわたって所得税法人税の減税が繰り返し行われてきたことを知っています。

冒頭でご紹介した「財政構造改革法」ですが、1998年12月に「財政構造改革の推進に関する特別措置法の停止に関する法律(財政構造改革法停止法)」が成立しています。

経済評論家を名乗っているくらいなのですから、「財政構造改革法停止法」については三橋貴明さんも当然知っているものと思われます。

 

「信じる者は救われる」どころか、「信じる者は騙される」「信じる者は馬鹿を見る」といった話になっているわけで・・・。

もちろん、騙す人が一番悪いということは言うまでもありませんが、誰でも知っているようなことを知らないために簡単に騙される人たちにも、かなり責任があるのではないでしょうか。

 

※追記:

三橋貴明さんの記事には、コメントをつけておきました。

消されるかもしれませんので、ここにコメント内容を残しておきたいと思います。

 

「財政構造改革法」は1998年に停止されている

 

 

1997年11月に成立した「財政構造改革法」は、1998年12月に成立した「財政構造改革法停止法」により効力が停止されています。
どうして20年前に効力が停止した法律によって、現在も緊縮財政が行われているのですか?

 

無知な人たちを騙すことで「愛国ビジネス」を展開するのは、あまり良いこととは思えません。

 

※注:2018年8月2日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。