UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

自民・安倍晋三総裁、早稲田大学・若田部昌澄教授「1万円札を刷ると通貨発行益9980円」

世の中の「国の借金なんてウソだ!」論の大半は、通貨発行益(シニョリッジ)についての誤解に基づいていると思いますので、もう少し突っ込んで考えてみたいと思います。

 

よくある誤解の一つが、「日本銀行が1万円札を発行すると、経費約20円を引いた残り9980円が通貨発行益になる」というものです。

もし、これが正しいのであれば、「国の借金? そんなの日銀が1万円札大量に刷って返せばいいじゃん!」って話になりますよね。

というわけで今回は、「日銀が紙幣(日本銀行券)を発行する際の通貨発行益」について考えてみましょう。

 

前回は、「日銀は民間金融機関から国債などを買い取り、代金を日銀当座預金の口座に振り込むことによって通貨の発行(マネタリーベースの供給)を行っている」というお話でした。

「代金を振り込む」という表現は厳密には正しくないかもしれませんが、要するに「買い取った国債の代金分、日銀当座預金の口座残高を増加させる」ということです。

 

では、日銀が日銀券を発行するということはどういうことなのでしょうか?

民間金融機関は日銀に開設している口座から当座預金を引き出して、日銀券に交換することができます。

この時初めて、日銀券が発行されるというわけです。

つまり、日銀が日銀券を発行した時には・・・

 

(借方) 当座預金 (貸方) 発行銀行券

 

・・・という処理をするだけなので、日銀は何も儲かっていません。

もちろん民間金融機関は、日銀券を日銀に預け入れて当座預金を増やすこともできます。

つまり、日銀が日銀券を回収した時には・・・

 

(借方) 発行銀行券 (貸方) 当座預金

 

・・・という処理をするわけで、結局のところ日銀の負債が、当座預金になったり、発行銀行券になったり形を変えているだけに過ぎないことがわかります。

日銀からしてみれば、負債が当座預金であろうが、発行銀行券であろうが、どちらにしろ利益(通貨発行益)は国債などから得られる金利収入だけなので、日銀券を発行することによる利益はありません。

 

「1万円札を刷る」というとなんだかいかにも儲かりそうに思えますが、それだけでは何の利益も生まないのですね。

ですから、「国の借金は、1万円札を刷って返せばいい!」という考え方は、残念ながら根本的に間違っているのです。

 

ね? そうですよね、安倍さん?

 

どちらにしろ、日銀はこれは紙とインクで刷るわけでありますから、20円で1万円刷るんですから、9980円貨幣発行費が出るんですよね。貨幣発行費については基本的にこれは政府に納付しますから、政府に納付しますからね、これは政府が紙幣を発行するのと同じという風に考えていただいていいと思います。これはあまり言うとですね、まあ円の、政治家自体が言うと円の信認をちょっと傷つける危険がありますから、まああまりみんなこのことはそんなに言うということは控えてまいるわけでありますが、そういう仕組みになっていますから、基本的には孫子の代にツケを残すということにはならないということは申し上げておきたいと思います。

(2012年12月2日、安倍晋三(あべ・しんぞう)自由民主党総裁(現総理大臣))

 

・・・。

ね? そうですよね、若田部さん?

 

たとえば紙幣を発行すれば額面価値と製造原価の間に差額があります。これをシニョレッジ(通貨発行権)と言いますが、1万円札の製造原価が20円くらいと言われるので、シニョレッジは9980円。

(『伝説の教授に学べ!』(東洋経済新報社)より、若田部昌澄(わかたべ・まさずみ)早稲田大学政治経済学術院教授(現日銀副総裁))

 

・・・。

 

※注:2018年7月3日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。

 

※追記:若田部教授については、ここだけ切り取るのはフェアではないような気もするので、前後の部分を含めて引用し直したいと思います。

 

日本銀行券の最終的な裏づけは何かというと、日本国政府です。日本国政府が徴税によって得る税金が担保となっているのです。たとえば紙幣を発行すれば額面価値と製造原価の間に差額があります。これをシニョレッジ(通貨発行権)と言いますが、1万円札の製造原価が20円くらいと言われるので、シニョレッジは9980円。これはじつは、形を変えた税金です。結局9980円を払っているのは、この1万円札を使っている国民だからです。

だから、日本銀行は、独占的に通貨を発行することで利益を得ることができますが、なぜそれができるのかというと、それは究極的には日本国政府に主権があって、税金を徴収できるからとも言えます。

そうすると、日本銀行券の担保は、突き詰めて言えば、それは日本国政府の持っている徴税能力、まさに日本国の主権の力そのものです。日本銀行がかりに欠損を出したら、政府が補填できる仕組みになっています。いまは日本銀行納付金という形で、日本銀行の儲けを政府に納めるようになっています。全体として見ると、最後は政府が支えています。

 

「1万円札を発行すると9980円利益を得ることができるが、これは形を変えた税金である」と言っているわけですが、そもそも1万円札を発行しても利益は得られませんので、やっぱり間違ったことを言っていることがわかります。