UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

中部大学・武田邦彦特任教授「徴税権が750兆円」

さて、しばらくの間「国の借金」について考えてみようということで、今回は中部大学の武田邦彦(たけだ・くにひこ)総合工学研究所特任教授のメールマガジン武田邦彦メールマガジン「テレビが伝えない真実」』から、「「日本は借金大国」という大ウソを報じた、政府とNHKの罪と罰」を見てみることにしましょう。

 

www.mag2.com

 

武田教授といえば、「フジテレビ『ホンマでっか!?TV』に出演している、人のよさそうな大学の先生」というイメージだったんですが、このメールマガジンを読んでビックリしました。

もちろん、どんな主張をしてもかまわないとは思うのですが、大学教授にしてはちょっと内容のレベルが低すぎないですか?(汗)

これを読んで、「やっぱり国の借金なんてウソだったんだ!」って思う人はいるのかなぁ???

 

まず、しょっぱなからのけ反らされるのが次の一文です。

 

確かに政府には借金がないのかも知れないが日本国全体には借金があるのではないか? と思うのが素直な日本人だろう。

 

・・・???

素直な日本人は「日本国全体には借金がないのかも知れないが、政府には借金があるのではないか?」って思ってるのでは?(汗)

「日本国全体の借金」とか、政府もNHKも誰もそんなこと言ってないんですよね。

マスコミが「国の借金が10XX兆円に増加し・・・」って言っているのは、財務省が年4回発表している「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」についての報道ですね。

これは何かというと、「中央政府の借金」について財務省が発表しているんです。

でも、「中央政府」ってなんだか聞きなれない言葉ですよね。

それは当たり前で、私たちは普段「中央政府」のことを「国」、「地方政府」のことを「地方公共団体」って呼んでいます。

ですから、「中央政府の借金」→「国の借金」と表現されているというだけのことなんです。

みんなで「中央政府の借金が1000兆円を超えているけど、大丈夫なのかなぁ・・・」って心配しているのに、武田教授は「日本国全体には借金はない! だから、消費税ゼロが可能だ!!」って論じているわけですね。

中央政府の借金を問題にしているのに、日本国全体の借金について論じても意味がないですよね・・・。

 

このメールマガジンで読むに値するのは、最初の「日本政府の連結決算」についての部分だけです。

それによると、資産が900兆円、国債が350兆円、徴税権が750兆円で、日本政府は合計2000兆円の資産を持っている。

それに対し負債は、国債が1350兆円、日銀券が350兆円で、合計1700兆円に過ぎない。

ということは、資産が負債を300兆円も上回っていて、わーい、やっぱり「国の借金」なんてウソだったんだー!

・・・あれ? でも、この計算、なんだかおかしいですよね?(汗)

それぞれの数字が正しいかということはとりあえず横に置いておくとして、そもそも「徴税権が750兆円」って何!?

確かに、日本政府に「徴税権」があることは間違いありませんが、それを資産として計上してもよいものなのでしょうか・・・。

 

まず、「徴税権」を資産計上するとしても、どのくらい資産価値があるのかわかりません。

「徴税権750兆円」というのは元ネタがあって、嘉悦大学高橋洋一(たかはし・よういち)ビジネス創造学部教授がそのように主張しているので、それをそのまま引用しているだけだと思われます。

高橋教授によると、徴税権は税収の25倍なので30兆円×25=750兆円となるそうなのですが、このような計算方法を主張している経済学者を他に誰も見つけることができませんでした。

仮に「徴税権」の資産価値が750兆円だったとしても、これを資産計上するということは、確定していない未来の収入を資産として計上していることになりますよね。

それだったら、確定していない未来の支出についても負債として計上しなければおかしいです。

もちろん、企業会計において「うちの会社は毎年少なくとも30億円の売り上げがあるから、750億円の資産があるってことだね!」なんていう処理は認められませんし、確定していない未来の支出を負債として計上する必要もありません。

公会計においても、財務省が作成している国の財務書類で「徴税権」を資産計上しているということはありませんし、国際公会計基準(International Public Sector Accounting Standards:IPSAS)でも「徴税権」を資産計上するということにはなっていないようです。

おそらく、「徴税権」を資産計上して財務書類を作成している国はどこにも無いのではないかと思いますが、さも当然のことのように、「徴税権750兆円」を資産に含めて「日本政府は債務超過ではない!」と主張しているわけですね。

 

武田教授は、経済学が専門ではないとはいえ大学教授なんですよね?

「徴税権って資産計上してもいいのかな?」とか「徴税権の資産価値ってどのくらいなのだろう?」とか「諸外国ではどのような会計処理をしているのかな?」とか、疑問に思ったり調べたりしないものなんでしょうか?

これでは、「財務省ガー!」「NHKガー!」「マスゴミガー!」って吠えてるそのあたりのブロガーと、全然レベルが変わらないではないですか。

 

どうやら武田教授の言うことは、「ホンマでっか!?」と言いながら笑って聞き流すのが正しいようですね(笑)

 

※注:2018年7月1日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。