UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

「保守」の対義語は「リベラル」ではない

最近とてもおかしいと思うのは、「保守」の対義語として「リベラル」が用いられていることですね。

 

誰がどう考えても、「保守」の対義語は「革新」でしょ。

保守主義」の対義語なんだったら、「進歩主義」でしょ。

 

報道番組なんかを見ていると、社会民主党日本共産党を「リベラル」と呼んでいてビックリさせられます。

 

「リベラル」って「自由主義」のことですよ?

なんで、「社会民主主義」や「共産主義」が「リベラル」なの?

 

政治思想と経済学は密接に結びついているので、経済学には三つの大きな潮流があることを知っておくと、状況が理解しやすいのではないかと思います。

まず、第一の潮流が「経済学の父」と呼ばれるアダム・スミス(Adam Smith, 1723-1790)から始まる経済学派で、「古典派経済学(classical economics)」→「新古典派経済学(neoclassical economics)」と続く経済学の主流派であり、まさに本流というべき流れです。

新古典派経済学では、市場メカニズムを重視して、政府による経済への介入はなるべく少なくしよう考えます。

ですから、「小さな政府」を目指すのが正しいということになり、これに対応しているのが「新自由主義(neoliberalism)」と呼ばれる政治思想です。

第二の潮流がカール・マルクス(Karl Heinrich Marx, 1818-1883)から始まる経済学派で、「マルクス経済学(Marxian economics)」と呼ばれています。

マルクス経済学では、そもそも市場メカニズムを採用していることが良くないと考えます。

ですから、「計画経済」を採用するのが正しいということになり、これに対応しているのが「共産主義(communism)」と呼ばれる政治思想です。

第三の潮流がジョン・メイナード・ケインズJohn Maynard Keynes, 1883-1946)から始まる経済学派で、「ケインズ経済学(Keynesian economics)」と呼ばれています。

ケインズ経済学では、市場メカニズムを重視しつつ、政府が必要に応じて積極的に経済に介入するべきだと考えます。

ですから、「大きな政府」を目指すのが正しいということになり、これに対応しているのが「社会自由主義(social liberalism)」と呼ばれる政治思想です。

 

わが国では一般的に、新自由主義社会自由主義自由主義勢力が「保守」、社会民主主義共産主義社会主義勢力が「革新」と呼ばれています。

新自由主義社会自由主義はどちらも自由主義なので、元々はどちらも「リベラル」です。

しかし、ややこしいことにアメリカでは、主に新自由主義に対応する考え方として「リバタリアニズム自由至上主義、libertarianism)」、主に社会自由主義に対応する考え方として「リベラリズム自由主義、liberalism)」という用語を用いています。

アメリカでは、新自由主義的な傾向を持つ共和党が「保守」、社会自由主義的な傾向を持つ民主党が「リベラル」と呼ばれているのですが、本来はどちらも「保守」でどちらも「リベラル」です。

アメリカは、共和党民主党以外の政党が連邦議会にほぼ進出できないような極端な二大政党制を採用しているので、このような分け方でもよいのかもしれません。

しかし、日本は多党制を採用しているので、これをそのまま当てはめようとすると訳が分からなくなってしまいます。

 

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かつての日本の政界は、自由主義政党である自由民主党と、社会主義政党である日本社会党の二大政党を中心としていました。

ですから、現在の分け方で言えば新自由主義的な政治家も、社会自由主義的な政治家も、どちらも自民党に在籍していました。

そして、「保守本流」と呼ばれる社会自由主義的な政治家たちが政権を担うことが多かったので、日本は経済的格差の小さい平等な国になったんですね。

しかし、その弊害として、地方にカネをばらまく「利益誘導型」の政治家がはびこるようになってしまって、政治腐敗が深刻化してしまいました。

要するに、新自由主義社会自由主義どちらかの考え方が一方的に正しいわけではなくて、何事もバランスが大事だということなんですね。

 

これで、「保守」と「リベラル」は何ら対立する概念ではないことが理解できたのではないかと思います。

かつての自民党には、「保守でリベラル」な政治家はたくさんいたわけです。

社会民主主義共産主義が退潮した現在では、「自由主義社会主義」といった路線対立ではなくて、「新自由主義社会自由主義」といった路線対立になっています。

自民党は経済団体がバックについていることもあって、どちらかと言えば新自由主義的です。

それに対し、労働組合がバックについている民進党は、どちらかと言えば社会自由主義的だったんですね。

立憲民主党を結党した枝野幸男(えだの・ゆきお)代表が、かつて「民主党こそが保守本流だ」と言っていましたが、そういうことなんです。

自民党も良い政党ですけど、だからといって自民党が二つあっても仕方がないんですね。

 

以上の解説は、学問的には厳密ではないところがあるかもしれませんが、とりあえず革新勢力を「リベラル」と呼ぶのはやめましょう。

「自分は保守でリベラルだ!」と宣言する人がたくさん出てくればいいなと、私は思っています。

 

※注:2017年10月3日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。