UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

日本のコアCPI上昇率と非正規雇用比率(1984~2016年)

そういえば、「デフレで非正規労働者が増えた!」っていう主張もよくありますよね。

 

・・・というわけで、総務省統計局ホームページでコアCPI上昇率(前年同月比)と非正規雇用比率を調べてみました。

 

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出典:総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」「労働力調査

 

1989年・1997年・2014年にコアCPI上昇率が跳ね上がっていますが、これは消費税導入・増税によるものですので、ご注意ください。

正規雇用比率は総務省統計局の「労働力調査」を基に、「非正規の職員・従業員」数を「役員を除く雇用者」数で割ることによって算出しました。

ただし、1984~2001年は「労働力調査特別調査」として、年1~2回の調査でした。

2002年以降は四半期ごとの平均値が発表されていますので、これを用いました。

 

結果は見ての通り、インフレやデフレとは関係なく、着々と非正規雇用比率が高まっていることがわかりますね。

日本経済がデフレに突入したのは1998年くらいですが、それ以前から非正規労働者は増え続けていたのです。

 

グラフが右肩上がりになっている時期を見てみると、どうやら1990年まで、1996~2005年、2013年あたりに大きく非正規雇用比率が高まっているようです。

労働者派遣法が成立したのは1985年6月 *1 ですが、それ以前から「業務請負」という形での実質的な労働者派遣が行われていました。

派遣業者が増えてくるにしたがって派遣労働者を保護する必要性も高まってきたので、労働者派遣法が作られたというわけですね。

この時は、ソフトウェア開発や通訳など13業務に限って労働者派遣を認めるということになっていました。

 

その後1996年くらいから2005年くらいにかけて、非正規雇用比率がかなり上昇しているわけですが、1995年に日本経営者団体連盟(日経連) *2 が『新時代の「日本的経営」』という文書を発表しています。

それによると、労働者は「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」の三つに区分され、長期蓄積能力活用型だけが正社員となり、それ以外は契約社員・嘱託・パート・派遣などに置き換えていくことがうたわれていました。

つまり、デフレだから非正規労働者が増えたのではなくて、経営者側の既定の方針に沿って、正規雇用から非正規雇用への置き換えが進められたのです。

 

なぜ経営者側がこのようなことを行ったのかというと、少子高齢化が進んでこれまでのような経済成長が望めない中、すべての労働者を正社員として雇っていたのでは、人件費が膨らんで経営が成り立たなくなってしまうからです。

そして、政府も労働者派遣の対象業務を拡大するなどして、そのような動きを後押ししました。

日本の場合、今まで雇っていた正社員の解雇は難しいですから、しわ寄せは若年者に集中することになります。

今でもそうですが、正規雇用と非正規雇用では賃金などの待遇がまったく違うのですから、非正規雇用の若者は結婚できず、子どもも生まれず、少子化が一層進展する結果になったというわけですね。

 

2013年から非正規雇用比率が高まっているのは、アベノミクスによる景気回復で雇用が増えただけでなく、4月に改正高年齢者雇用安定法が施行され、企業に対して希望者全員を65歳まで継続雇用することが義務付けられたことも影響しているのではないかと考えられます。

定年を65歳に引き上げたり、定年制を廃止したりした企業もあるでしょうが、おそらく多くの企業では、非正規雇用で再雇用するという対応を取っているでしょう。

 

個人的には、非正規雇用比率が高まるのは必ずしも悪いことではないと考えています。

正規雇用については、なぜか派遣労働がやり玉にあがることが多いですが、非正規労働者の大半はパート・アルバイトであり、派遣労働者は1割もいません。

労働者派遣の対象業務を拡大してきた政府の方針は間違っていると思いますが、だからといって、労働者派遣を禁止しても何の解決にもならないことは明らかです。

むしろ真の問題は、日本の社会保障制度が正規雇用を前提として作られていることにあるのではないでしょうか。

夫は会社員、妻は専業主婦かパートという前提が崩壊しているのであれば、非正規労働者であっても結婚して子供を持てて・・・という社会にしていかない限り、少子化は止まらず日本は衰退していくことになるのではないかと思います。

 

※注:2017年1月5日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。

*1:施行されたのは1986年7月です。

*2:2002年に経済団体連合会に統合されて、現在では日本経済団体連合会となっています。