UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

日本の完全失業者数と自殺者数(1978~2015年)

では、なぜ不況真っ最中ではなく、不況から遅れて自殺者数が増えるのでしょうか?

 

・・・というわけで、総務省統計局ホームページで完全失業者数を、厚生労働省ホームページで自殺者数を調べてみました。

 

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出典:総務省統計局「労働力調査」、厚生労働省平成28年度版自殺対策白書

 

「完全失業者」というのは、簡単に言えば「就職活動をしていて働いていない失業者」のことです。

ですから、調査期間中に1時間でも働いていれば「就業者」に、就職活動をしていなければ「非労働力人口」にカウントされることになります。

自殺者数については、厚生労働省の「平成28年度版自殺対策白書」から、警察庁の「自殺統計」を基に厚生労働省自殺対策推進室が作成した時系列データを用いました。

 

結果は見ての通り、完全失業者数と自殺者数は同じような動きで増減していることがわかりますね。

これで、1983年と1998年の自殺者数急増を説明することが出来ます。

不況の影響で失業者が増えたために、自殺者も増えているのです。

 

つまり、失業は不況に遅れて発生するのですね。

実際のところ、完全失業率景気動向指数の遅行指数を構成する指標の一つとなっています。

もうわかったと思いますが、不況に遅れて物価が下落する。

不況に遅れて失業者数が増加するので、自殺者数が増加する。

すなわち、不況に遅れて物価の下落と自殺者数の増加が起こるので、見かけ上は物価が下がると自殺者が増えるように見えるというわけなのです。

 

考えてみればこれは当たり前の話で、物の値段が安くなったからという理由で自殺する人はいません。

しかし、「デフレで自殺者が増えた!」などというと、それらしく聞こえてしまうわけです。

世の中には何でもデフレのせいにする人たちがいますが、本当にそうなのか、冷静に判断する必要があるのですね。

 

ただし2000年代を見ると、完全失業者数が359万人(2002年)から257万人(2007年)へと減少しているにもかかわらず、自殺者数は3万2千人を超え続けています。

この時期は、小泉内閣(2001年4月26日~2006年9月26日)が新自由主義に基づいた「聖域なき構造改革」を行っていた時期にほぼ相当します。

2002年2月~2008年2月まで「いざなみ景気」と呼ばれる戦後最長の景気拡大が続いたのに、自殺者数が3万2千人を下回ることはありませんでした。

 

新自由主義的に考えるならば、失業したり自殺したりするのは、本人の「自己責任」ということになります。

2009年には河村建夫(かわむら・たけお)内閣官房長官が、鳩山由紀夫(はとやま・ゆきお)民主党代表が党首討論で自殺問題に言及したことについて、「お涙ちょうだいの議論をやるゆとりはないのではないか」と記者会見で語りました。

河村官房長官内閣府の自殺総合対策会議会長を兼任しており、政府による自殺対策の最高責任者がこのような認識だったのですから、自由民主党政権下で自殺者数が高止まりしていたのは当然のことなのかもしれません。

 

自由主義経済においては、景気の変動により失業者が発生することは避けられないのであれば、失業しても自殺に追い込まれないようなセーフティネットが必要不可欠です。

新自由主義は、「小さな政府」を目指して社会保障を削減しようとする政治的立場なので、これが徹底されると、社会的弱者にとっては非常に厳しい社会になってしまいます。

どれだけ景気拡大しても、どれだけ経済成長しても、それが国民の幸福につながらないのであれば意味がありません。

現在の日本では、新自由主義を支持する人が非常に多いですが、本当にそれで良いのか、ゆっくり考えてみる必要があるのではないかと思います。

 

※注:2016年12月31日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。