UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

通貨発行権がある国は財政破綻しない?

前回は、「財政ファイナンスによって政府の財政規律が弛緩してしまうと、日本銀行がインフレを抑える手段を喪失してしまう」ということを確認しました。

日銀による財政ファイナンスですぐにハイパーインフレーションが起きるということはありませんが、うまくインフレを制御できなくなってしまう恐れがあるということですね。

「絶対に起きる」のではなく、「起きる恐れがある」ということですから、「リスクがある」と表現されるわけです。

 

ネット上では、「通貨発行権がある国は財政破綻しない!」という意見がよく見受けられます。

確かにそうかもしれませんが、制御不能なインフレになってしまっては元も子もありません。

ちゃんと理解した上でそのような主張をする悪質な人たちは、読んだ人が「じゃあ、大丈夫なんだ!」とわざと誤解するように書いているわけです。

財政破綻しない代わりに悪性のインフレになるので、結局解決にはなりませんよ」と書いてしまっては商売にならないので、「財政破綻しない!」というところだけを強調しているのですね。

きちんと自分で勉強せずにネット上の情報をすぐに真に受けてしまうような人たちは、簡単にマインドコントロールされた状態になってしまって、いわゆる「愛国ビジネス」の格好のカモになってしまうというわけです。

 

きちんと「通貨発行益(シニョリッジ)」について理解していれば、ネット上のインチキに簡単に騙されずにすみます。

「日本には通貨発行権があるから大丈夫!」などと信じ込んでいる人たちは、おそらく「通貨発行権を行使すれば、どんどん通貨発行益が得られる」と勘違いしているのだろうと思います。

日銀は民間金融機関から国債などを買い取り、代金を日銀当座預金の口座に振り込むことで通貨(マネタリーベース)を供給しているんでしたよね。

このとき日銀のバランスシート上では、資産として国債などが、負債として日銀当座預金が計上されることになります。

つまり、発行した通貨は日銀にとってみれば「負債」であり、日銀の受け取る通貨発行益は国債などから得られる金利だけ *1 なのです。

これは、日本銀行券の発行でも同じことで、1万円札を発行すれば、製造コスト約20円を差し引いた9,980円が儲かるという話ではないのですね。

 

ameblo.jp

 

政府が財政危機に陥ったときに通貨発行で補うということは、政府が国債政府紙幣などを発行し、日銀に買い取らせて借金返済に充てるということです。

民間金融機関が買ってくれるのであれば、わざわざ日銀に買い取らせる必要はないので、これはもはや日銀しか買い手がいないという状況であるわけですね(政府紙幣は利子がつかないので、そもそも日銀しか引き受け手がいません)。

ということは、日銀としては財政を破綻させないために買うしかないので、こうなるといざインフレになってもうまく抑制できないことが考えられます。

もし、インフレにならなかったとしても、通貨発行した分負債が増えただけで別に儲かったわけではありませんから、これは将来の日本国民が負担することとなります。

 

要するに、インフレになれば「インフレ税」として現在の日本国民が、インフレにならなければ将来の日本国民が負担するわけで、結局は国民の負担になるのですね。

これを「日本には通貨発行権があるので、日本は財政破綻しない!」と言っているわけです。

「日銀にとっては、発行した通貨は負債である」ということを知っていれば、もうネット上のインチキには騙されませんよね。

 

 

「経済学を学ぶ目的は、経済問題に対する出来合いの対処法を得るためではなく、そのようなものを受け売りして経済を語る者にだまされないようにするためである」(ジョーン・ロビンソン、1903~1983年)

 

※注:2016年9月19日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。

*1:2016年2月からは、日銀当座預金のうちの法定準備預金額を超える部分(超過準備)に年-0.1%のマイナス金利がついているので、正確にはこれも通貨発行益となります。