UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

財政ファイナンスはなぜいけないの?

前回は、「日本銀行国債を購入することで財政再建できる!」というのはただの詭弁で、日銀による「実質的な財政ファイナンス」が行われているに過ぎないということを確認しました。

しかし、日銀による財政ファイナンスというのは、そもそも悪いことなんでしょうか?

 

財政ファイナンスがなぜいけないかというと、いくら国債を発行しても日銀が買い取ってくれるので、政府の財政規律が弛緩してしまう恐れがあるからです。

実際のところ、ネット上の世論を見る限りでは、もっと国債を発行して大規模な財政出動を行うという政策が大人気ですよね。

現実の政治においても、安倍晋三(あべ・しんぞう)首相は消費税の10%への増税を見送り、国民の大多数はそれを大歓迎したわけです。

 

大規模な財政出動を行えば、一時的に景気が良くなって経済も成長します。

すると、「もっとやれ、財政出動し続けろ!」という国民の声が大きくなっていくはずです。

わが国の主権者は国民ですから、そうなってくると積極的な財政出動を掲げる政党が選挙で有利になるので、政府としては財政出動せざるを得なくなってきます。

どうしても、政府の財政規律は弛緩していってしまう可能性が高いと考えられます。

 

逆に言えば、政府の財政規律が保たれれば、とりあえず大丈夫ということでもあります。

日銀の黒田東彦(くろだ・はるひこ)総裁が消費税増税を求め続けたのは、「政府の財政規律の弛緩こそがリスクだ」ということを理解しているからなのです。

いかにして、軍事費の増大に歯止めをかけるかということに直面した高橋是清(たかはし・これきよ)大蔵大臣と、まったく同じような立場に立たされているわけですね。

 

問題が表面化するのは、いざ本当にインフレになった時です。

このとき政府の財政が、完全に日銀による財政ファイナンスに頼り切っているような状態になっていれば、日銀がインフレを抑えるために国債を売却することが困難になります。

政府の財政を破たんさせないように、日銀が国債を買い続けなくてはならなくなってしまうわけですね。

つまり、財政ファイナンスがいけない理由は、「日銀がインフレを抑える手段を喪失してしまうから」ということなんです。

 

政府が増税することでインフレを抑えることが出来るかもしれませんが、インフレで生活が苦しいときにさらに増税というのは、なかなか国民の理解を得られないのではないかと思います。

また、インフレになれば政府債務が実質的に目減りするので、政府が積極的にインフレ退治には動かないということも考えられます。

 

インフレになると、いわゆる「インフレ税」という形で、家計から政府への所得移転が起こります。

富裕層は貴金属・土地・株式を購入したり、そもそも海外に脱出したりすることで「インフレヘッジ」を行い、「インフレ税」から逃れることが出来ます。

しかし、生活資金以外に余剰資産を持たない貧困層は、「インフレ税」の直撃を受けてしまいます。

富裕層は課税から逃れられる「インフレ税」は、まさしく究極の不公平税制とでもいうべきものなのですね。

 

もし、将来的にもインフレが起こらないのであれば・・・今の金融緩和政策が、そのまま続いていくことになります。

しかしそれは、景気回復・経済成長によるインフレが起こらないということでもあります。

つまり、ずっと今まで通りの低成長が続くということなわけで・・・結局のところ問題を先送りしているだけで、何の解決にもなっていないということがわかると思います。

 

※注:2016年9月18日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。