UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

日本の貨幣乗数(2003~2016年)

では、なぜ日本銀行は、マネタリーベースを増やすことでマネーストックを増やすことができると考えたのでしょうか?

 

これには、現在では「リフレ派」と呼ばれている経済学者たちの理論が大きくかかわっています。

まずは、1992~1993年に『週刊東洋経済』(東洋経済新報社)誌上で行われた、「マネーサプライ論争」を見てみましょう。

これは、岩田規久男(いわた・きくお)上智大学経済学部教授と翁邦雄(おきな・くにお)日本銀行調査統計局企画調査課長との間で行われた論争で、岩田教授は「ハイパワードマネー(マネタリーベース)×信用乗数貨幣乗数)=マネーサプライ(マネーストック)」であるから、「ハイパワードマネーを増やせば、マネーサプライが増える」と主張しました。

それに対して、翁課長は「銀行の貸し出しによってマネーサプライが決まり、それに見合うように日銀はハイパワードマネーを供給しているだけ」であるから、「ハイパワードマネーでマネーサプライをコントロールすることはできない」と主張しました。

岩田教授の主張は、前回少し触れたC・A・フィリップスの信用創造論に基づいていることがわかりますね。

 

・・・というわけで、日本銀行の統計を基にして、貨幣乗数をグラフにしてみました。

 

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出典:日本銀行マネタリーベース」「マネーストック

 

貨幣乗数(money multiplier)というのは、マネーストックがマネタリーベースの何倍になるかを表した数字です。

日銀のマネーストック統計は2003年4月までさかのぼれますので、今回は2003年4月以降の貨幣乗数をグラフにしてみました。

結果は見ての通り、日銀がマネタリーベースを増やしても貨幣乗数が低下するだけで、マネーストックをコントロールすることはできないことがわかります。

 

・・・というよりも、「日銀が供給したマネタリーベースが、信用創造によって何倍かのマネーストックになる」という考え方そのものが間違いなのではないでしょうか。

結局のところ、貨幣乗数というのはマネーストックとマネタリーベースの比に過ぎず、そもそも経済学でいうところの「乗数」ではないのではないかと思うのですが・・・。

 

※注:2016年7月1日にAmebaブログにて投稿した記事を転載しています。

 

※追記:貨幣乗数論の誤りについては、以下のブログ記事がわかりやすいです。

whatsmoney.hateblo.jp