UNEMPLOYED ECONOMICS

失業中で暇な人が経済学を学んでいくブログです。

放送大学『現代経済学('19)』第4~5回

録画しておいた放送大学『現代経済学('19)』の第4~5回を視聴しました。

 

第4回で取り上げられたノーベル経済学賞受賞者は、ローレンス・クライン(Lawrence Robert Klein, 1920-2013)、ジェームズ・ヘックマン(James Joseph Heckman, 1944-)、クリストファー・シムズ(Christopher Albert Sims, 1942-)で、三人とも「計量経済学」の分野で功績のあった経済学者です。

ヘックマンは、社会的成功のためには知能指数(Intelligence Quotient:IQ)のような認知能力ではなく、心の知能指数(Emotional Intelligence Quotient:EQ)のような非認知能力が重要であるとする、「ペリー就学前プロジェクト」の研究でも有名です。

シムズは「物価水準の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level:FTPL)」でも話題になっていますね。

 

第5回で取り上げられたノーベル経済学賞受賞者は、ミルトン・フリードマンMilton Friedman, 1912-2006)、ジョージ・スティグラー(George Joseph Stigler, 1911-1991)、ゲーリー・ベッカー(Gary Stanley Becker, 1930-2014)で、三人とも「シカゴ学派」の経済学者ですね。

この中でもフリードマンは、経済学的には「マネタリズム」、政治学的には「新自由主義」を唱えた最重要人物です。

フリードマン率いるシカゴ学派は、ジョン・メイナード・ケインズJohn Maynard Keynes, 1883-1946)から始まる「ケインズ経済学」を徹底的に批判し、「反ケインズ革命」を成し遂げることになります。

この授業では「恒常所得仮説」「新貨幣数量説」「自然失業率仮説」が取り上げられていましたが、1962年の『資本主義と自由』で「政府が手がけてはいけない政策」として挙げられている項目が興味深かったので、少し長くなりますが列挙してみたいと思います。

 

①農産物の買い取り保障価格制度

②輸入関税または輸出制限

③商品やサービスの産出規制

④物価や賃金に対する規制・統制

⑤法定の最低賃金や上限価格の設定

⑥産業や銀行に対する詳細な規制

⑦通信や放送に関する規制

社会保障制度や福祉

⑨事業・職業に対する免許制度

公営住宅および住宅建設の補助金制度

⑪平時の徴兵制

⑫国立公園

⑬営利目的の郵便事業の禁止

⑭国や自治体が保有・経営する有料道路

 

フリードマンは、徹底して「小さな政府」を求めたのですね。

この新自由主義に基づいて、イギリスでは1979~1990年にマーガレット・サッチャー(Margaret Hilda Thatcher, 1925-2013)首相が、アメリカでは1981~1989年にロナルド・レーガン(Ronald Wilson Reagan, 1911-2004)大統領が、日本では1982~1987年に中曽根康弘(なかそね・やすひろ)首相が改革を行いました。

2001~2006年に小泉純一郎(こいずみ・じゅんいちろう)首相が行った「聖域なき構造改革」も、新自由主義に基づいた改革です。

スティグラーは、産業組織論の分野で厳格な独占禁止政策に反対しました。

ベッカーは「人的資本理論」で知られ、経済学の分析手法を社会学などにも応用した経済学者です。

 

シカゴ学派は経済学界を席巻し、先進国では新自由主義に基づいた政策が行われるようになったわけですが、これが必ずしもうまくいっているかというとちょっと疑問です。

新自由主義は「古典的自由主義」への先祖返りなので、経済的格差の拡大や大不況の発生といった問題が復活してしまっています。

 

結局のところ、新自由主義にしろ社会自由主義にしろ、新古典派経済学にしろケインズ経済学にしろ、全面的に正しいと信じ込んで極端な方向性を打ち出すと、おかしなことになってしまうように思います。

今のところ、短期についてはケインズ経済学、長期については新古典派経済学に分がある感じがしていますが、短期の政策を長期に当てはめようとしたり、長期の政策を短期に当てはめようとしたりすると、間違った政策になってしまうのではないでしょうか。

景気変動は短期の問題なのでケインズ経済学的アプローチで、経済成長は長期の問題なので新古典派経済学的アプローチで考えるべきであるように思います。

何事も「中庸」が大切で、偏った考え方は間違っている可能性が高いと私は考えています。

放送大学『財政と現代の経済社会('19)』第3~4回

録画しておいた放送大学『財政と現代の経済社会('19)』の第3~4回を視聴しました。

財政学の「経費論(財政支出論)」「租税論」「公債論」「予算論」の4分野のうち、第3回からは経費論(財政支出論)を扱うことになります。

 

私的財には、「人々がその財を使用できないようにすることができる(排除性)」「ある人がその財を使用することによって、他の人がその財を利用できる量が減少する(競合性)」という性質がありますが、公共財には非排除性・非競合性という性質があります。

ですから、「ただ乗り(フリーライド)」の問題が出てくるので、公共財は市場メカニズムではうまく供給されず、政府が供給する必要があるのですね。

 

かつての日本では、公共投資による社会資本整備が盛んに行われていたのですが、日本の産業構造が変化したり、経済がグローバル化したりしたことにより、公共投資乗数効果は低下してしまいました。

経済企画庁(現内閣府)の経済モデルによると、1967年のパイロットモデルでは、1年目の乗数が2.17、2年目の乗数が4.27、3年目の乗数が5.01となっていました。

高度経済成長期に公共事業を行えば、かなりの経済効果が得られていたわけですね。

しかし、1996年の計量委員会10次では、1年目の乗数が1.30、2年目の乗数が1.45、3年目の乗数が1.24となっています。

もはや公共事業を行っても、その経済効果は限られているということなのですね。

 

公共事業に対して、社会保障や医療・保健の社会経済効果はどのくらいあるのかというと、1兆円の需要=投資に対する生産効果は、公共事業が2兆8091億円なのに対して、社会保障が2兆7164億円、医療・保健が2兆7373億円でほとんど変わりません。

1兆円の需要=投資に対する雇用効果は、公共事業が20万6710人なのに対して、社会保障が29万1581人、医療・保健が22万5144人でより多くの雇用を生み出します。

1兆円の需要=投資に対する粗付加価値(GDP効果)は、公共事業が1兆3721億円なのに対して、社会保障が1兆6416億円、医療・保健が1兆4669億円でより多くのGDPを生み出します。

 

現在の日本では公共事業を行うよりも、医療や介護や福祉や教育などにお金をかけたほうが経済効果が大きいということがわかりますね。

ですから、1990年代に盛んに公共事業が行われたにもかかわらず、日本経済は低迷を抜け出すことができず、2000年代以降は公共事業が削減されているということなのです。

ネット上には「政府が公共事業を行えば、日本経済は成長する!」と言っている人がたくさんいますが、上記のことを知っていれば、これはまったく馬鹿らしい主張であることがわかります。

それどころか、高度経済成長期に作られた設備の耐用年数が切れつつあるので、新たな公共事業ではなく、設備の更新にこそ予算を投じるべきです。

 

昔だったら、新幹線や高速道路を開通させれば、どんどん日本経済が成長したんでしょうけどねぇ・・・。

これから日本経済を成長させるためには、政府は人的資本への投資(=教育)を重点的に行ったほうがよいのではないでしょうか。

放送大学『現代経済学('19)』第2~3回

録画しておいた放送大学『現代経済学('19)』の第2~3回を視聴しました。

 

第2回で取り上げられたノーベル経済学賞受賞者は、ジョン・ヒックス(John Richard Hicks, 1904-1989)、ケネス・アロー(Kenneth Joseph Arrow, 1921-2017)、ジョン・ナッシュ(John Forbes Nash Jr., 1928-2015)でした。

ヒックスは1939年の『価値と資本(Value and Capital)』などで知られ、「IS-LMモデル」や「流動性の罠」でも有名ですね。

アローは「アローの不可能性定理」、ナッシュは「ナッシュ均衡」にその名を残しています。

天才数学者であるジョン・ナッシュの生涯は、『ビューティフル・マインド(A Beautiful Mind)』という映画にもなっています。

 

第3回で取り上げられたノーベル経済学賞受賞者は、ロバート・ソロー(Robert Merton Solow, 1924-)、ロバート・ルーカス(Robert Emerson Lucas Jr., 1937-)、エドワード・プレスコット(Edward Christian Prescott, 1940-)でした。

ソローは「ソローモデル」と呼ばれる経済成長理論で知られ、経済成長率を資本増加率、人口増加率、技術進歩率の合計と考えました。

技術進歩率は外生的に与えられる変数であるため、このモデルは「外生的成長理論」とも呼ばれます。

ルーカスは「合理的期待形成仮説」と呼ばれる理論を打ち立てて、「ケインズ経済学(Keynesian Economics)」を経済学界から事実上葬り去ってしまいました *1

プレスコットは「リアルビジネスサイクル理論」で知られ、合理的期待を形成する代表的個人や貨幣の中立性を仮定すれば、非自発的失業は存在せず、政府の財政金融政策は無効となると主張しました。

 

ルーカスやプレスコットといった経済学者は、「新しい古典派(new classical economics)」と呼ばれる経済学派に分類されています。

これは「新古典派経済学(neoclassical economics)」の一派で、ケインズ経済学の側も「新ケインズ派(new Keynesian economics)」が対抗しているのですが、いずれにせよ「マクロ経済学のミクロ的基礎付け」を重視して、元々のケインズ経済学とは離れていったようです。

本来のケインズ経済学を受け継いでいるのは、「ポストケインズ派(post-Keynesian economics)」と呼ばれている学派で、最近話題になっているMMT(現代貨幣理論、modern monetary theory)は、ポストケインズ派の経済学者(ポストケインジアン)たちによる理論ですね。

 

・・・まったく、「ニュー」とか「ネオ」とか「ポスト」とか、むちゃくちゃ紛らわしいんですけど(汗)

ざっくり整理すると、新しい古典派などの新古典派経済学と新ケインズ派が「主流派経済学」、ポストケインズ派マルクス経済学が「非主流派経済学」ということになるのでしょうか。

非主流派経済学はほとんど無視されているわけですが、少数派だからと言って必ずしも間違っているということではないので、ポストケインジアンたちの巻き返しも十分にあり得るだろうと思います。

科学において正しいとされてきたことが、あっさりひっくり返ることはしばしば起こるので、教科書に載っていることを妄信せず、いろいろな考え方を学ぶことが重要なのかなと思います。

*1:1980年には「The Death of Keynesian Economics(ケインズ経済学の死)」という文章を発表しています。